この記事の要点
制限行為能力者は、単独で完全な法律行為ができない4類型(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助者)です。
単独でした一定の行為は、後から取り消すことができます。ただし成年被後見人でも、日用品の購入など日常生活に関する行為は取り消せません(民法9条但書)。
本人以外の者の請求で補助開始の審判をするには、本人の同意が必要です(15条2項)。
制限行為能力者とは、判断能力が十分でないために、単独でできる法律行為が制限され、保護者が付される者のことです。未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助者の4類型があります。
制限行為能力者が保護者の関与なく単独でした行為は、原則として後から取り消すことができます。取り消されると、その行為は初めから無効であったものとして扱われます。
制限行為能力者は、次の4つに分かれます。未成年者は年齢で区分され、成年被後見人・被保佐人・被補助者は判断能力の程度に応じて分かれます。
成年被後見人の法律行為は取り消すことができます。ただし条文には例外があります。
日用品の購入その他日常生活に関する行為は、取り消すことができません(民法9条ただし書)。食料品や日用品の買い物まで取り消せるとすると、かえって本人の生活が成り立たなくなるためです。
また、成年被後見人には保護者の同意権がありません。成年後見人の同意を得てした行為であっても、本人が実際にそのとおり行動できるとは限らないため、なお取り消すことができます。
この点は、同意を得れば確定的に有効となる被保佐人・被補助者と異なります。
被保佐人は、日常の行為は単独でできますが、重要な財産上の行為には保佐人の同意が必要です。民法13条1項は、借財・保証、不動産その他重要な財産の権利の得喪を目的とする行為、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・改築・増築などを挙げています。
同意が必要な行為を同意なくしたときは、取り消すことができます。逆に、保佐人の同意を得る前であれば、本人が自分の判断でその行為をやめることは妨げられません(同意は行為を強制するものではないため)。
補助は、4類型のうち最も判断能力が残っている人を対象とし、本人の自己決定を尊重する制度です。
本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意が必要です(民法15条2項)。本人の意思に反して保護を始めることはできない、という趣旨です。
補助開始の審判は、同意権を付与する審判または代理権を付与する審判とともにされます。
制限行為能力者が、相手方に自分を行為能力者であると信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができません(民法21条)。だまされた相手方を保護するためです。
Q. 成年被後見人が日用品を購入した場合、その契約は取り消すことができる。○か×か。
×。日用品の購入その他日常生活に関する行為は、取り消すことができません(民法9条ただし書)。
Q. 成年被後見人が成年後見人の同意を得てした法律行為は、取り消すことができない。○か×か。
×。成年後見人には同意権がないため、同意を得てした行為であっても取り消すことができます(日常生活に関する行為を除く)。
Q. 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意が必要である。○か×か。
○。補助は本人の自己決定を尊重する類型で、本人以外の請求による補助開始の審判には本人の同意が必要です(民法15条2項)。
制限行為能力者は未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助者の4類型で、単独でした一定の行為は取り消せますが、成年被後見人でも日用品など日常生活に関する行為は取り消せません。本人以外の請求による補助開始の審判には本人の同意が必要で、詐術を用いたときは取り消せません。
「成年被後見人=同意があっても取り消せる・日用品は取り消せない」「補助開始は本人の同意」を押さえておきましょう。
この論点が問われた過去問です。正答は法務省公表の正解によります。各問の解説は年度・問番号から確認できます。
| 年度・No. | 正答 | 問われた論点 |
|---|---|---|
| 平成30 No.1 | 5 | 行為能力 |
※正答は法務省公表の正解(標準解答)によります。「記述」は記述式問題です。
参考にした資料
・民法 第5条(未成年者の法律行為)・第9条(成年被後見人の法律行為)・第13条(保佐人の同意を要する行為等)・第15条(補助開始の審判)・第17条(補助人の同意を要する旨の審判等)・第21条(制限行為能力者の詐術)の条文で確認
・平成30年度 土地家屋調査士試験 午後の部 第1問(行為能力)/法務省 公式問題
※法令は改正されることがあります。最新の条文はe-Govでご確認ください。内容確認日:2026年6月16日。
まちがえやすいポイント
成年被後見人は、成年後見人の同意を得てした行為でも取り消せます(同意権がない)。一方、日用品など日常生活に関する行為は取り消せません。「同意があっても取り消せる/日用品は取り消せない」を逆にしないよう整理しましょう。被保佐人・被補助者は同意を得れば取り消せなくなる点と区別します。