この記事の要点
占有権は、物を事実上支配している状態に与えられる権利です(民法180条)。
占有の移転(引渡し)には、現実の引渡し・簡易の引渡し・占有改定・指図による占有移転の4つがあります。
占有の承継では自己の占有のみか前主の占有を併せて主張するかを選べ(187条)、占有の訴え(占有訴権)は間接占有者も提起できます(197条)。
占有権は「持っているという事実」を保護する権利で、所有権などの本権とは別ものです。取得時効や引渡しの場面で出てくる、調査士民法の頻出テーマです。
占有権とは、所有権などの本権があるかどうかとは関係なく、物を事実上支配している状態そのものに与えられる権利です(民法180条)。
たとえ無権原で物を持っている人でも、その「持っている事実」は占有権として一定の保護を受けます。
占有の移転=引渡しには、次の4つの態様があります。現実に物を動かさなくても占有を移せる方法がある点がポイントです。
| 引渡しの態様 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 現実の引渡し | 物を現実に渡す | 182条1項 |
| 簡易の引渡し | 既に相手が所持しているとき、意思表示だけで移転 | 182条2項 |
| 占有改定 | 売主が以後は買主のために占有すると表示し、引き続き売主が所持 | 183条 |
| 指図による占有移転 | 占有させている第三者に「以後は買主のために占有せよ」と命じ、買主が承諾 | 184条 |
占有を承継した者(相続人や買主など)は、自己の占有だけを主張することも、前の占有者の占有を併せて主張することもできます(187条1項)。
「併せて主張しなければならない」わけではなく、どちらを選ぶかは承継した人の自由です。ただし前の占有を併せて主張するときは、その瑕疵(悪意など)も引き継ぎます(187条2項)。
占有を侵害されたときは、本権がなくても占有の訴えで保護を求められます。占有を奪われた場合の占有回収の訴え(200条)、妨害された場合の占有保持の訴え(198条)、妨害のおそれがある場合の占有保全の訴え(199条)があります。
賃借人のように代理人を通じて占有する間接占有者も、占有の訴えを提起できます(197条後段)。
Q. 占有を相続した者は、必ず被相続人の占有を併せて主張しなければならない。○か×か。
×。自己の占有のみを主張することも、被相続人の占有を併せて主張することもでき、選べます(民法187条1項)。
Q. 売主が売却後も引き続き物を所持し、以後は買主のために占有する旨を表示する引渡しを、占有改定という。○か×か。
○。占有改定です(民法183条)。現実に物を動かさずに占有を移す方法です。
Q. 賃借人のように代理人を通じて占有する間接占有者は、占有の訴えを提起できない。○か×か。
×。代理人によって占有する者(間接占有者)も、占有の訴えを提起できます(民法197条)。
占有権は物を事実上支配する状態に与えられる権利で、引渡しには現実・簡易・占有改定・指図による占有移転の4態様があり、占有の承継は自己のみか併せてかを選べ、占有の訴えは間接占有者も提起できます。
取得時効の「占有」とつながる分野なので、あわせて整理しておきましょう。
参考にした資料
※法令は改正されることがあります。最新の条文をご確認ください。内容確認日:2026年6月27日。
まちがえやすいポイント
占有の承継は「自己の占有のみ」か「前主の占有と併せて」かを選べます。「併せて主張しなければならない」とするのは誤りです。また、占有改定(売主が持ったまま)と指図による占有移転(第三者に占有させたまま命じる)の違いもよく問われます。