独学で学ぶ土地家屋調査士

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抵当権の効力とは|及ぶ範囲・物上代位・第三取得者(民法370〜380条)

この記事の要点

抵当権の効力は、抵当不動産だけでなく、それに付加して一体となっている物(付加一体物)にも及びます(民法370条)。ふだんは果実(賃料など)に及びませんが、債務不履行の後に生じた果実には及びます(371条)。

目的物が売却・滅失などで金銭に姿を変えたときは、物上代位によってその金銭(代金・保険金など)に及びます(372条)。ただし払渡しの前に差押えが必要です。

土地に設定した抵当権は、その土地の上に建っている建物には及びません(370条かっこ書き。土地と建物は別個の不動産だからです)。

抵当権は、目的物の占有を設定者に残したまま設定する担保物権です。設定者は不動産をそのまま使い続けられ、返済できなくなると抵当権者が競売で優先弁済を受けます。

択一で問われるのは、大きく2つの「範囲」です。

  • 物的な範囲……効力がどこまで及ぶか(370〜372条)
  • 被担保債権の範囲……いくらまで優先弁済されるか(375条)

この記事は、その両方を条文の順に整理します。

抵当権とは(369条)

抵当権とは、債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、抵当権者が他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利です(民法369条1項)。特徴は次の3点です。

  • 占有を移さない……設定者(所有者)は不動産を使い続けられる(質権との違い)
  • 優先弁済……他の債権者に先立って弁済を受けられる
  • 目的物……不動産のほか、地上権・永小作権も目的にできる(369条2項)

効力の及ぶ範囲=付加一体物(370条)

民法370条は、抵当権は抵当地の上に存する建物を除き、抵当不動産に付加して一体となっている物に及ぶと定めています(設定行為に別段の定めがある場合などは除く)。この「付加して一体となっている物」を付加一体物といいます。

区分抵当権の効力
付合物(増築部分・取り外せない庭石など・242条)及ぶ
従物(畳・建具・石灯籠など)※判例上、設定当時に存在したもの及ぶ
従たる権利(借地上の建物に対する敷地の賃借権など)及ぶ
土地に設定した抵当権と、その土地上の建物及ばない(別個の不動産)

注意したいのは表の最後です。

土地と建物は別々の不動産なので、土地に設定した抵当権は、その土地の上の建物には及びません。逆に、建物に設定した抵当権も土地には及びません。

両方を担保に取るには、土地と建物のそれぞれに抵当権を設定します。

果実に及ぶのはいつか(371条)

抵当権は目的物の交換価値を把握する権利なので、ふだんは果実(賃料などの収益)には及びません。設定者は不動産を使って収益を上げられます。

ただし例外があります。民法371条は、抵当権はその担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶと定めています。

債務不履行より後に生じた賃料などには、効力が及ぶわけです。「不履行の前か後か」で結論が変わる点が問われます。

物上代位(372条・304条)

目的物そのものが失われても、それが金銭に姿を変えれば、抵当権はその金銭を追いかけます。これが物上代位です(372条が先取特権の304条を準用)。

抵当不動産 (抵当権つき) 売却・滅失 損傷・賃貸 受けるべき金銭 代金・保険金・賃料 抵当権が 及ぶ ※払渡し・引渡しの前に差押えが必要
模式図:目的物が代金・保険金などに姿を変えると抵当権が及ぶ(物上代位)。ただし払渡しの前に差押えが必要。

物上代位の対象になるのは、目的物の売却・賃貸・滅失・損傷によって設定者(債務者)が受けるべき金銭です。具体的には次のものです。

  • 売却による売買代金
  • 賃貸による賃料
  • 滅失・損傷による火災保険金・収用の補償金

ただし条文には重要な条件があります。抵当権者は、その金銭が設定者に払い渡され、または引き渡される前に差押えをしなければなりません(304条ただし書)。

払渡しの後では物上代位できません。ここが引っかけになります。

優先弁済を受けられる範囲=利息は最後の2年分(375条)

抵当権で優先弁済を受けられるのは、元本は全額ですが、利息その他の定期金には制限があります。民法375条は、利息その他の定期金については、満期となった最後の2年分についてのみ抵当権を行使できると定めています。

それ以前の分も、満期後に特別の登記をすれば、その登記の時から行使できます。

この制限は、同じ不動産に後順位の抵当権者や他の債権者がいるときに、先順位者の利息が膨らんで後順位者の取り分を食いつぶさないようにする趣旨です。

第三取得者の保護=代価弁済・抵当権消滅請求(378〜380条)

抵当権つきの不動産を買った人(第三取得者)を、抵当権の負担から解放する仕組みが2つあります。

制度内容
代価弁済(378条)抵当不動産の所有権・地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じて代価を弁済すると、抵当権が消滅する
抵当権消滅請求(379条〜)第三取得者の側から、一定額を提供して抵当権の消滅を請求できる

ここで問われるのが、消滅請求をできない人です。民法380条は、主たる債務者、保証人およびこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができないと定めています。

これらの人は、もともと債務の全額を弁済する義務を負っているからです。より低い額で抵当権を消すことは認められません。

まちがえやすいポイント

①土地に設定した抵当権は、その土地上の建物には及びません(370条)。②物上代位は、金銭が払い渡される前に差押えをしなければできません(372条・304条)。③抵当権消滅請求は、主たる債務者・保証人・これらの承継人はできません(380条)。この3点が抵当権の効力でねらわれる典型です。

調査士試験での位置づけ

抵当権は権利部(乙区)に記録される権利で、表示に関する登記を扱う土地家屋調査士の直接の業務ではありません。

しかし択一の民法で問われるほか、法定地上権(388条)や、更地に抵当権を設定した後に建物が建った場合の一括競売(389条)など、土地と建物の関係を理解する土台になります。

理解度チェック

Q. 土地に設定した抵当権の効力は、その土地の上に建っている建物にも当然に及ぶ。○か×か。

×。土地と建物は別個の不動産であり、370条かっこ書きのとおり、土地の抵当権は抵当地の上に存する建物には及びません。

Q. 抵当権は、担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。○か×か。

○。民法371条のとおりです。不履行前の果実には及びません。

Q. 抵当権者は、目的物の売却代金が債務者に払い渡された後でも、物上代位によりその代金を差し押さえることができる。○か×か。

×。物上代位は、払渡しまたは引渡しの前に差押えをしなければなりません(304条ただし書)。

Q. 主たる債務者や保証人は、抵当不動産を取得すれば抵当権消滅請求をすることができる。○か×か。

×。主たる債務者・保証人およびこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができません(380条)。

まとめ

抵当権の効力は、抵当不動産に付加一体となった物に及び(370条)、債務不履行の後は果実にも及びます(371条)。目的物が金銭に変われば物上代位で及びますが、払渡し前の差押えが必要です(372条・304条)。

優先弁済は、元本の全額と利息の最後の2年分(375条)までです。第三取得者には代価弁済・抵当権消滅請求があり、主たる債務者や保証人は消滅請求できません(380条)。

参考にした資料

・民法369条(抵当権の内容)・370条(抵当権の効力の及ぶ範囲=付加一体物、抵当地の上に存する建物を除く)・371条(不履行後の果実に及ぶ)・372条(304条〔物上代位〕の準用)・375条(利息その他の定期金は満期となった最後の2年分)・378条(代価弁済)・379条(抵当権消滅請求)・380条(主たる債務者・保証人・これらの承継人は消滅請求できない)を条文で確認。付合物・従物への効力は242条・87条および判例の解釈による

独学で学ぶ土地家屋調査士 編集部

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土地家屋調査士試験の用語・条文・記述式・測量計算を、法務省の公式情報と最新の法令に照らして整理しています。

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