この記事の要点
遺産分割とは、相続開始でいったん共同相続人の共有になった遺産を、誰が何を取得するか確定させる手続です。その効力は、相続開始の時にさかのぼって生じます(民法909条・遡及効)。
ただし遡及効によって第三者の権利を害することはできません(909条ただし書)。
また、遺産分割で法定相続分を超えて取得した部分は、登記等がなければ第三者に対抗できません(899条の2)。
相続が開始すると、相続財産はいったん共同相続人全員の共有になります。誰が何を取得するかを確定させる手続が遺産分割です。
試験では、遺産分割の効力が「いつ」から生じるか(遡及効)と、第三者との関係が問われます。相続登記に直結するので、調査士でも押さえておきたい論点です。
民法907条は、共同相続人はいつでも、その協議で遺産の全部または一部を分割できると定めています(被相続人が遺言で禁じた場合などを除く)。
協議が調わないとき、または協議ができないときは、各共同相続人が家庭裁判所に分割を請求できます(907条2項)。
遺産分割は、遺産に属する物や権利の種類・性質、各相続人の年齢・職業、心身の状態や生活の状況その他いっさいの事情を考慮して行います(906条)。
被相続人は、遺言で分割の方法を定めることができます。相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁止することもできます(908条)。
民法909条は、遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずると定めています。
分割で土地を取得した相続人は、分割の時ではなく相続開始の時からその土地の所有者だったものとして扱われます。これを遡及効といいます。
この遡及効には限界があります。分割の遡及効によって、第三者の権利を害することはできません(909条ただし書)。
たとえば、分割前に相続人の一人が自分の相続持分を第三者に譲り渡していたとします。あとの遺産分割の遡及効を理由に、その第三者の権利を否定することはできません。
相続だからといって、登記なしに何でも第三者に対抗できるわけではありません。
民法899条の2は、相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分については登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないと定めています(2019年施行)。
遺産分割で法定相続分を超えて取得した部分は、登記をしなければ第三者に対抗できません。「相続だから登記は不要」と考えるのは誤りです。
遺産分割は、相続登記の場面に直結します。
遺産分割協議で不動産を取得した相続人は、その内容で相続登記を申請します。法定相続分を超える部分は登記をしないと第三者に対抗できないため、相続登記の義務化とあわせて理解しておきましょう。
Q. 遺産分割の効力は、遺産分割が成立した時から将来に向かって生じる。○か×か。
×。遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じます(民法909条本文・遡及効)。
Q. 遺産分割の遡及効によって、分割前に相続持分を取得していた第三者の権利を否定することができる。○か×か。
×。909条ただし書により、遡及効で第三者の権利を害することはできません。
Q. 遺産分割で法定相続分を超えて取得した部分は、登記をしなくても当然に第三者に対抗できる。○か×か。
×。法定相続分を超える部分は、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できません(899条の2)。
Q. 共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合などを除き、いつでも協議で遺産を分割できる。○か×か。
○。民法907条1項のとおりです。協議が調わないときは家庭裁判所に請求できます。
遺産分割の効力は相続開始の時にさかのぼりますが(909条)、その遡及効で第三者の権利を害することはできません(ただし書)。
法定相続分を超える部分は、登記等がなければ第三者に対抗できません(899条の2)。協議・審判(907条)、分割の基準(906条)、遺言による分割禁止(908条)とあわせて押さえましょう。
参考にした資料
・民法906条(遺産分割の基準)・907条(協議・審判=共同相続人はいつでも協議で分割でき、調わないときは家庭裁判所に請求。令和3年改正後)・908条(遺言による分割方法の指定・相続開始から5年を超えない範囲での分割禁止)・909条(遺産分割の効力=相続開始の時にさかのぼる。ただし第三者の権利を害することができない)・899条の2(相続による権利承継は、法定相続分を超える部分について登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できない。平成30年改正・2019年施行)を条文で確認
※法令は改正されることがあります。最新の条文をご確認ください。内容確認日:2026年7月14日。
まちがえやすいポイント
遺産分割の効力は相続開始の時にさかのぼりますが(909条本文)、その遡及効で第三者の権利を害することはできません(909条ただし書)。さらに、法定相続分を超える部分は、登記等がなければ第三者に対抗できません(899条の2)。遡及効と、超過部分の対抗要件は別の話として整理しましょう。