この記事の要点
座標(X, Y)をX+Yiという1つの数(複素数)で表すと、2点間の距離と方向角がまとめて求まります。
2点の差をとり、その絶対値が距離、偏角が方向角になります。
関数電卓の複素数モードを使うと、緯距・経距を別々に出さなくても、距離と方向角が一度に出せます。複素数を使っても答えは通常計算と同じで、速く正確になるのがメリットです。
距離や方向角そのものの基礎(三角関数・緯距・経距)は測量士補の範囲と共通です。三角関数の基礎は姉妹サイト「初心者が学ぶ測量士補」にゆずり、ここでは関数電卓の複素数を使って、座標から距離・方向角を出すという、土地家屋調査士の記述式での使い方を計算例で扱います。まず複素数を使うメリットを押さえておくと理解が早いです。
2点 P1(X1, Y1)と P2(X2, Y2)を、それぞれ複素数 X1+Y1i、X2+Y2i で表します。この2点の差をとると、次のようになります。
差 = P2 − P1 =(X2 − X1)+(Y2 − Y1)i = ΔX + ΔY i
この差について、絶対値(大きさ)が2点間の距離、偏角(角度)が方向角になります。緯距(ΔX)と経距(ΔY)を別々に出してから三平方や逆三角で計算しなくても、複素数のまま距離と方向角が出せます。
次の2点を例にします(数値は説明のための例です。単位はメートル、座標はX・Y)。
| 点 | X | Y |
|---|---|---|
| P1 | 100.00 | 100.00 |
| P2 | 130.00 | 140.00 |
① 2点の差をとる
ΔX = 130 − 100 = 30.00、ΔY = 140 − 100 = 40.00。複素数の差は 30 + 40i です。
② 絶対値=距離を出す
複素数 30+40i の絶対値は、実部と虚部の二乗和の平方根です。
距離 = √( 30² + 40² )= √( 900 + 1600 )= √2500 = 50.00 m
③ 偏角=方向角を出す
偏角は、実部(ΔX)と虚部(ΔY)から求めます。方向角は北(X軸)から時計回りに測る角なので、tan(方向角)= ΔY ÷ ΔX = 40 ÷ 30 = 1.3333… です。
方向角 = tan⁻¹( 40 ÷ 30 )≒ 53.13° = 53°07′48″
④ 逆算で検算する
求めた距離50.00mと方向角53.13°から、もとのΔX・ΔYに戻るかを確かめます(cos53.13°=0.6、sin53.13°=0.8)。
| 戻す量 | 計算 | 判定 |
|---|---|---|
| ΔX(北) | 50.00 × cos53.13° = 50 × 0.6 = 30.00 | 一致 |
| ΔY(東) | 50.00 × sin53.13° = 50 × 0.8 = 40.00 | 一致 |
もとのΔX=30・ΔY=40に戻ったので、距離50.00m・方向角53°07′48″で正しいと確かめられます。
Q. 座標を複素数で表したとき、2点の差の絶対値が距離、偏角が方向角になる。○か×か。
○。差の絶対値(大きさ)が2点間の距離、偏角(角度)が方向角です。緯距・経距を別々に出さなくても、まとめて求められます。
Q. 複素数を使うと、通常の計算とは違う特別な距離・方向角が得られる。○か×か。
×。答えは通常の計算と同じです。複素数は座標を1つの数で扱う「表示方法」で、速く正確に処理できるのがメリットです。
座標をX+Yiで表すと、2点の差の絶対値が距離、偏角が方向角になり、まとめて求められます。緯距・経距を別々に計算する手間が減り、記述式の座標計算が速くなります。
求めた距離・方向角は、逆算(距離×cos=ΔX、距離×sin=ΔY)でもとに戻るかを検算しましょう。座標が出たら、交点計算や座標法の求積につなげられます。
参考にした資料
・複素数による座標計算(2点の差の絶対値が距離、偏角が方向角)の考え方について、土地家屋調査士の記述式の解説で確認。方向角は平面直角座標系で北(X軸)から時計回りに測ることを前提としています。
・本文の計算例は、当編集部が作成した仮の数値によるもので、逆算で検算しています。公式の解答例ではありません。
※使用できる電卓の条件(プログラム機能のある電卓は不可)は試験要項でご確認ください。内容確認日:2026年7月7日。
まちがえやすいポイント
方向角は北(X軸)から時計回りに測る角で、tan(方向角)=ΔY÷ΔX(東÷北)です。XとYを逆にすると方向角がずれます。また、複素数を使っても答えは通常計算と同じで、速く正確に処理できるのがメリットです。関数電卓の実際のキー操作は機種によって違うので、お使いの複素数モードのある関数電卓(プログラム機能のないもの)で操作を確認しておきましょう。